日语能力考试一级阅读精选问题集(20)
現在の科学は、専門の科学者によって運営されています。じつはこれが大きな問題なのです。専門の科学者というのは、論文を書く人であって、生物学者であれば生物を題材にして論文を書く。生物を題材にして論文を書くことが必要なのです。論文を書かなければ学者として認められず、評価されない。研究費がこない、仕事にならない。だから論文を書くのです。
ところがその作業をよく考えてみると、論文を書くというのは、生きたシステムとしての生き物を止めてしまうということです。ページに書いてある、論文にかいてある言葉の羅列を生き物だと思う人はいません。すでに生き物が情報となって止まっているのですから。
そのことをしみじみと感じるのは、患者と検査データの違いです。病院の外来に行くと、若い医者もいます。彼らの中にはパソコンの画面と検査の結果を書いた紙と、MRI「注」とかX線の写真を見て、患者の顔を見ないという人がかなりいます。実際に、お年寄りのお母さんを連れて外来に行った娘さんがこうこぼしていました。
「先生は診察している間に、一度も私の母の顔を見なかった。」
生きたものを扱えなくなっているのです。生きたものは不潔で、あてにならなくて、怖くて、ややこしい。でも、情報化したものはきれいです。言葉もそうです。紙の上にきれい並んでいるから、処理がしやすい。それに対して患者はいろんな問題を起こす。診察している間中うろうろ落ち着かなかったり、急に怒り出したりとか、気に入らないことがいっぱいある。それに比べたら検査のデータどいうのは非常にきれいであり清潔です。ところがそれを生き物と錯覚しているところがあるんです。ここでも話がまったく逆転しています。生きているものはもうちょっと変なものなのです。
(養老孟司 茂木健一郎『スルメを見てイカがわかるか』角川書店による)
「注」MRI:磁気を用いて脳や血流など体の内部を診断する装置
【問1】「生きたシステムとしての生き物」とは何か。
1. 現在の科学を運営している専門の科学者
2. 生物学者が論文の題材にする生物
3. 検査の結果やMRIやX線などの写真
4. 病院の外来にいるお年寄りや娘さん
【問2】筆者がこの文章で、最も言いたいことは何か。
1. 現在の科学は、専門の科学者によって運営されているが、それは大きな問題があるのでやめた方がよい
2. 専門の科学者は、論文を書くことで認められようとするが、データだけで生きたものを扱っていないことは大きな問題である
3. 若い医者の中には、怖くて、ややこしいので患者の顔を見ないという人がかなりいるが、それは大きな問題である
4. 病院の外来で、MRIとかX線の写真など検査のデータだけから患者を処理するのは、大きな問題である。